【知らない記憶SS】知らない変更
聞いた音声を文字にする。 たったそれだけ。 それだけの仕事なのに、悩みはつきない。 「……わー、く……」 そもそも何の問題もなく聞き取ることのできるような、すこぶるクリアな音声など、ほとんどない。周囲の話し声や雑音が入ってくる。...
【知らない記憶SS】知らない現場
「むー……」 寝転がりながら、カルチャー誌『151A』を天井にかざす。 調臣さんからもらった見本誌だ。つい二週間ほど前に起こしたインタビューが記事になっている。 「うむむむー」 もちろんライターさんによって魅力的に仕上げられた記事には、俺の仕事の片鱗は見当たらない。だけど、...
【知らない記憶SS】知らない言葉
きょうも声が走っている。 テレビのアナウンサーが報じるニュース。すれ違う人の会話。店内アナウンス。様々な言葉が、日常に溢れている。 そう実感するようになったのは、この仕事に就いてからのことだ。 清澄白河の高層マンションの一室に、音谷反訳事務所はある。...
既刊情報
『コハルノートへおかえり』1・2巻 名前と猪突猛進の性格にコンプレックスを抱える女子高生の小梅。ある土砂降りの日、親友の紗綾(さや)との喧嘩で最悪な気分の小梅を救ってくれたのは、優しい香りをまとう男性だった。澄礼(すみれ)と名乗る彼に導かれた先は、ハーブとアロマのお店、コハ...