ホワイトデーSS ~二人の約束 byコハルノート
三月を待っていたかのように、春一番が吹いた。季節を運ぶ風は強く、服装も髪型も吟味しないと大変なことになる。 コハルノートの扉の前で、私は鏡を取り出して、前髪をチェックした。案の上ボサボサだ。手櫛で整えてからドアを開けると、私よりも先に風が入っていった。...
バレンタインSS inコハルノート byコハルノートへおかえり
「こんにちはー!」 バレンタインデー当日。勢いよくコハルノートの扉を開くと、カウンターの中にいた樹さんが接客の笑みをすっと消した。 「もっと静かに入ってこれないのか、梅子?」 「サリュ、コウメ! 彼女の魅力の一つは、元気じゃないか」...
バレンタインSS~紗綾の場合 byコハルノート
「紗綾っ!」 待ち合わせ場所で本を広げていた私は、すぐに顔を上げた。そこに小梅ちゃんが飛び込んでくる。 いきなりのハグに、思わず私はよろめいた。 「久しぶり! 会いたかったよぉっ!」 肩から顔を上げた小梅ちゃんは満面の笑顔だ。もう、かわいい。許す。...
2017年もお疲れさまでした
今年も残すところ、本日のみということで。 お疲れ様でございます。 どんな一年でしたでしょうか。 今年は『知らない記憶(こえ)を聴かせてあげる。』を刊行しまして、 竹岡美穂先生に装画を描いていただけたのが今年のハイライトでした。...
美味しいコーヒー飲み比べ
昨日・今日と、川越の蓮馨寺で行われていた第一回川越コーヒーフェスティバルに行ってきました。 あまりイベントに行くことがなかったのですが、コーヒーも川越も大好きなので、重い腰を上げて! コーヒー飲み比べチケットを購入して、全国のいろいろなお店のコーヒーの味比べ。...
【知らない記憶SS】知らない変更
聞いた音声を文字にする。 たったそれだけ。 それだけの仕事なのに、悩みはつきない。 「……わー、く……」 そもそも何の問題もなく聞き取ることのできるような、すこぶるクリアな音声など、ほとんどない。周囲の話し声や雑音が入ってくる。...
【知らない記憶SS】知らない現場
「むー……」 寝転がりながら、カルチャー誌『151A』を天井にかざす。 調臣さんからもらった見本誌だ。つい二週間ほど前に起こしたインタビューが記事になっている。 「うむむむー」 もちろんライターさんによって魅力的に仕上げられた記事には、俺の仕事の片鱗は見当たらない。だけど、...
【知らない記憶SS】知らない言葉
きょうも声が走っている。 テレビのアナウンサーが報じるニュース。すれ違う人の会話。店内アナウンス。様々な言葉が、日常に溢れている。 そう実感するようになったのは、この仕事に就いてからのことだ。 清澄白河の高層マンションの一室に、音谷反訳事務所はある。...
既刊情報
『コハルノートへおかえり』1・2巻 名前と猪突猛進の性格にコンプレックスを抱える女子高生の小梅。ある土砂降りの日、親友の紗綾(さや)との喧嘩で最悪な気分の小梅を救ってくれたのは、優しい香りをまとう男性だった。澄礼(すみれ)と名乗る彼に導かれた先は、ハーブとアロマのお店、コハ...